第4章

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けど、…でも。だったらどうしてこの人は私にこんなにも感情的になるんだろう。 そこまで考えて、ふとさっきの香坂さんの言葉が頭に浮かんだ。 そうだ。そういえば、私はこの人の“大嫌いな女”に似ていると言っていた。 「…そんなに似てますか?」 「は?」 「その…“大嫌いな女”に」 そう言った後に“やらかした”と思った。 こんなこと聞いたらもっと感情的にさせてしまうんじゃないかと思った。 けど、私のその予想は外れたようだった。 香坂さんは一瞬、またさっきのように目を見張って驚いたような表情をしたけど、すぐに目を細めた。 「…そうだな」 「……」 「…自分は悪くねぇのに謝るとことか、」 中途半端なところで言葉を一旦切った香坂さんは、まるでどこか遠い記憶を思い出すような目で、私の目をじっと捉える。 …どうしてだろう。 香坂さんは確かに“大嫌いな女”だと言ったはずなのに。 「……嫌になるくらい、似てるよ」 ――…どうして、そんな顔をするんだろう。 私に“全部、顔に出てる”だなんて言ったくせに、この人こそその言葉がピッタリだと思った。 香坂さんは自分が感じた感情をそのまま表情に露出してる。今だって、そうだ。 けど、彼のその感情がどういう類からくるものかは分からない。 怒りなのか、呆れなのか。 嫌悪なのか、憎悪なのか。 どれかなのかは分からない。もしかしたらどれも当てはまらないのかもしれない。 だって――… とてもじゃないけど今の彼の表情は“嫌いな人”を思い浮かべているような表情には見えなかった。
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