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 例えば、空がきれいだったから。  そんな理由だったらまだ救われるのになって思うのは、たぶん非人道的っていうか、倫理観がないみたいなことを、言われてしまうのかな。  でも、そんな理由が、君らしいんだ。  原因が、へばりつくような産業廃棄物から出る謎の液体みたいな不快なものでも、夜寝るまで目を閉じている時に襲ってくる気味の悪い蠢く暗闇でも、どんなものだって、一歩が踏み出せた理由はそういう、誰かに理解されないようなものであればって。  これは僕の願望なのかな。君ならこうあってよ、ていう、勝手な考え。なんだかそんな気がするけど、結局君しか答えは知らないわけだから、誰にも否定はできないはずなんだけど、きっと否定されてしまう。  だから僕は黙って泣いている人たちを見ていることしか出来ない。なんだかんだ、泣いてくれる人が君にいることに少し驚きながら。  君が煙と灰にになってしまって、僕はどちらを君と思えばいいのか悩む。今日も天気がいい。やっぱり煙の方が君なのかな。空を夢見た君だから。  じっとその煙を見上げていたら、僕もなんだか、飛べちゃいそうだ。 「残された方の気持ちを考えろってんだよ」  隣で橋本くんが吐き捨てた。まだ溢れそうなくらいに目に悲しみを滲ませている。 「残される方のこと、考えられなかったって、考えられないの?」  ネクタイを掴まれる。もっと早くそうしてくれれば、こんな言葉、零れることはなかったのに。  きっと殴られるんだろう、殴られたらもう一言何か言おう、そう思ってたけど、橋本くんは手を離して、素直に謝ってきた。
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