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雨は全てを洗い流すという。
全てとは言わないまでも、私にとって、雨は「色」をなくす恵みの水だ。
例えば、雨が降る。
普通の人々にとって、それは単なる耳障りでしかない。
だが、私は傘も差さず、雨が降るのをただ見つめている。
水滴は、この、セカイを灰色に染めていく。
ゆっくりと、染み込むように。
憧れの彼に雨粒が当たった。
彼の容姿に関心がなくなった。
土砂災害で多大の被害を受けた地域があった。
電線に雨が伝うのを見た私には、もうどうでもいいことだった。
かつてセカイには、色が満ちていた。
今は、その色が、剥がれ落ちている。
あるいは、歪んでいる。
そして、また。
今日も、雨が降る。
私の上に、ポツリ。
全てを流す、恵みの雨が。
……とうに私に色などないのに。
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