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黒髪の男は、金髪の魔術師の腕をつかんでいる方と反対の手を、すっと動かすとそこに魔法陣が2つ浮かびあがる。その魔法陣が生成途中の帰還魔術を挟み込むように飲み込んでいって分解していく。
分解されたのを確認すると黒髪の男は金髪魔術師の手を離し、手のひらを俺に向けた。
手からは見るからに高位魔術と分かる複雑な魔法陣が放出され、俺を飲み込む。
金髪魔術師が「おいおい、下位魔族のために、使う術かよ……。」と驚きと呆れが入り混じった声で言っているのが聞こえる。
見たことも無い術に、頭が危険信号を発しているが、黒髪の男が発する魔力に当てられたような状態になり、指先一本動かせない。
そのまま、魔法陣が俺にぶつけられる。金色に光り輝くその魔法陣に飲み込まれるが、思ったような衝撃は来ない。
ただ、術の行使は終了したようで、先ほどのようにこの空間すべてに魔力が充満しているということも無く、体も動かせそうだ。
きょろきょろと見回してみるが、変わりはなさそうだ。
ふと、自分の下にある魔法陣を見ると、先ほどまで青白く光っていたはずのものが金色にぼんやりと光っている。
「契約の強制書きかえって……。さすが天才と呼ばれる魔術師ってところか。」
金髪の魔術師が俺の下の魔法陣を見ながら言う。
一体どういうことだ。召喚契約の第三者による介入は出来ない訳ではないらしいが、極めて難しいと聞いたことがある。
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