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クロード様の魔力はトロリとした蜜のように甘く、全身がしびれる。久しぶりの魔力供給に全身が小刻みに震える。ドクドクと血液が循環する音が体内から聞こえてきてまるで酒に酔ったように赤くなる。
気がつくと、俺の両手の甲には契約の証しである魔法印と呼ばれる刺青のような印が浮かび上がっていた。
「これで、お前は俺のモノだ。」
そう言われ、俺はクロード様の方を見る。
暫くの間、クロード様と見つめあう。
それは、数分だったか、あるいは数十秒の事だったのかも知れない。
けれど、俺はこの人のこの漆黒の瞳にとらわれてしまったのだ。
自覚をしてはいけない何かを振り払うように首を横にぶるぶるとふる。
クロード様は俺の事を頭の先から足の先まで見ると
「まずは、風呂と服だな。」
と一人納得して、俺を俵担ぎで抱える。
「それじゃあ、帰るわ。」
と金髪の魔術師に声をかけるクロード様に、「え、この後、一緒にバザールへ行くって約束は?」と慌てて声をかけていたが、クロード様は平然と「また今度な。」と俺を抱えたまま、この建物をすたすたと出ていってしまった。
その場には、金髪の魔術師が居るのみとなった。
「へえ、今まで頑なに魔族との契約を拒否してきた男がねぇ……。」
そう金髪の男はつぶやいて、「これから面白くなりそうだ」と言いながら、人の悪そうな笑みを浮かべた。
End
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