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不躾なのかも知れないけれどキョロキョロとあたりを見回すと執事と思われる初老の男性が深々と頭を下げていた。
「お帰りなさいませ。」
執事はそう言った後、クロード様、それから俺に視線をよこした。
「こちらの方は?」
「今日から俺の使い魔になった、あー……、名前聞いて無かったな。」
ぐしゃぐしゃと自分自身の頭をかきむしってバツが悪そうに俺に名前を聞くクロード様は何故だか少し可愛いと思った。
「ノアです。」
「そうか。」
目尻を下げた笑顔を浮かべて名前を呼ばれる。
むずむずと恥ずかしい様な、嬉しい様な良くわからない感情がわき上がってくる。
口元がニヤけてしまいそうで無理矢理引き結んだ所為できっと今の俺は普段以上に変な顔になっているだろう。
そんな俺を見下ろしながらクロード様はふっと笑った。
その笑顔が本当に綺麗で思わず見とれた。
「ノアの着る服の用意をしたいのだが。」
執事がしばし思案するそぶりを見せた後、口を開いた。
「差し出がましいかと思いますが、主(あるじ)様の幼少の頃のお召し物がございます。
そちらを使用してもよろしいでしょうか?
新しい服は改めて仕立て屋を呼ぶ事にいたしますが。」
「ああ、それでいい。」
「それでは今持ってまいりますが、お部屋にお持ちするのでよろしいでしょうか?」
「いや、浴場に頼む。」
「かしこまりました。」
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