1.さやかとの出会い―いつもみる不思議な夢

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それから3年後、僕が高校1年生の時だった。あの交通事故の前の晩にいつもの夢を見たことを覚えている。朝、うなされて目が覚めた。そしてその日、目の前で事故が起こった。 その日は繁華街の書店で小説を買っての帰り道、犀川大橋を渡り、蛤坂を昇って来て、寺町の大通りとの交差点で信号を待っていた。 この交差点は広小路交差点より50mほど上の方で、横断歩道があって、そこを渡るとそこが旧鶴来街道の入口になる。 そこを直進するとすぐに忍者寺と呼ばれている妙立寺(みょうりゅうじ)がある。妙立寺は加賀前田藩ゆかりの寺で、当時、出城の役割も果たすようにと建物に工夫がされている。そこから、さらに5分ほど歩いたところに僕の家がある。 その横断歩道の信号は、広小路交差点の信号よりもかなり待ち時間が長い。しかも、この場所は、広小路交差点から寺町に上ってくる車道が大きく右に曲がる場所で、信号を待っていると、自動車が自分めがけて突進してくる感じがする。ただ、急カーブではないので、車は難なく曲がっていく。 今はガードレールが取り付けられており、危険は感じなくなったが、その当時は遮るものはなにもなかった。そういうところで横断歩道の信号が青になるまで待たなければならなかった。 交差点での車の衝突事故によって歩行者が巻き込まれて死傷者が出たとのニュースがそのころ何回もあったので、親からも注意するように言われていた。だから、ここで信号を待っている時はいつも広小路方向を見ていた。 もう一人、小学2~3年生くらいの女の子が傍で信号を待っている。隣にいる僕のことが気になるのか、正面の信号を見ながら、時々こちらを見ている。 信号が変わって広小路交差点の方から乗用車が3~4台こちらへ向かってくる。20m位離れたバス停の前で方向を変えるのだが、そのうちの1台は変える気配がない。 こちらへ向ってくる。危ない! こちらへくる! とっさに女の子の手を取って引き寄せて数歩後ろへ退く。車は僕たちの居た場所を通過して家の塀に衝突した。ドッシーンとすごい音がした。
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