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先輩はじっと私を見ていたが、皮肉気な笑いを口の端に浮かべ「そうか。」と言った。 その言葉が胸に、槍のように突き刺さる。 「それじゃいくわ俺。」 「先輩何しに来たのよ。用事何だったの?」 ちょっと口の悪い後輩を演じてみる。私としては精いっぱいの強がりだ。 ドアのノブに手をかけた先輩が少しだけ私の方に顔を向ける。 「その日記帳が他のやつらに見つかるとヤバいと思って一度持って帰るつもりだった。」 そう言ってドアを開け、閉める前に苦笑と共に呟いた。 「答え。ちょっとだけ期待した」 バタンとドアが閉まり、一瞬にして静寂が広がる音楽準備室。 その無音の中、私はしゃがみこみ、手にした日記帳を広げる。 これ。いつ頃書いたんだろう。 ひとつひとつ、字を拾う。 『いい加減疲れた 貴方を追うのも どんなに追っても あんたはどんどん私を引き離していく 大声で叫べば 貴方はもしかしたら 振り返ってくれるのかもしれない でも私には無理 悲しいくらいの自尊心 ほこりまみれの恋心』 鉛筆で書かれた紙の上に、ぽたりと広がる涙の波紋。 じわじわと紙がふやけていく。 そのうち嗚咽が漏れだすけれど、私に止める手立てがない。 自分の泣き声が脳内に溢れてどれだけの音量が出ているのかもわからない。 ドアが静かに開けられたのも気づかないくらいに。     
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