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今思えば、あの時私は先輩に恋をした。 無自覚だった。 ううん、違う。 認めたくなかっただけ。 先輩と後輩の枠から抜け出すのが怖かった。 だけどそのせいで、手痛いしっぺ返しを食らった。 「あの雨の日の事、俺も覚えてる。」 そう。日記帳に一番最初に書いたのはあの日の事。 日記としてつけておくのは恥ずかしくて、ポエムの形にした。 「あれは俺にとっても大事な思い出だ。」 慌てて顔を上げる。先輩は笑っていなかった。 じっと見つめてくる拓翔先輩に、あの時の動揺した自分が重なり金縛りにされてしまう。 「だから俺はショックだった。本屋での萌の言葉が。」 眼鏡越しでも、目の中に怒りの色がかすめたことに気づかないほど私は鈍感じゃない。 「どっちなんだ? それの中に書いてあったのが本当の萌の気持ちなのか?俺はお前に告っときゃよかったのか?」 体が熱くなる。きっと体温上昇中だ。このままだと私も倒れそうだ。 「答えろよ、萌。」 切羽詰まったような声で責められるとつい本音がポロリとこぼれそうになる。 ずっと貴方が好きだった。あの日からずっと。 そう言いたい。 けれど。 私は下を向き唇をかんだ。     
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