第2章 キジマハヤオ

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でも、そこで一つの疑問が生じた。 なぜあきは昨日”辛い恋”だったって言ったのだろうか? しかも、彼の生前も私が辛そうにしていたって言ってた。 「昨日の私が言ったこと気にしてるんでしょ?」 と、あきは私に突然言った。 「野崎、顔に出るから大体考えてることが想像できる。」 そう言って笑ったあきは更に、 「ごめんね。昨日野崎にとって辛い恋だったって言ったのは、野崎につい不注意でキジマの話をしちゃったから、ああ言ったら興味無くすかなって思っからなの。逆効果だったみたいだけどね。」 と言った。 「なら、私はキジマと付き合っていたときはどんな感じだったの?その…あきから見てて。」 そんな私の素朴な疑問に、あきは笑いながら 「幸せそうだったよ。毎日毎日どんどん可愛くなって行ってた。だから私もキジマとのことを安心して見守ってった。」 と答えた。 「そっか。なら良かった。」 不思議とそのあきの言葉に心がなった。 まるで体の細胞一つ一つが嬉しいと行っている様な気がした。 「でもね、野崎。今のあんたはどんどんキレイになってるよ。」 「えっ、何?急に?」 「恋を知ったのはキジマのおかげかもしれないけど、愛を教えてくれたのは千紘さんなのかなって思って。大人として、一人の女性として素敵になってるよ。だから、引き金を引いたのは私だけど、元カレのことに気をとられないでね。ちゃんと今は千紘さんを大事にしてね。」 「あ…き。うん!もちろん!」 その言葉はまるで少しだけ傾いたキジマハヤオへの私の気持ちを見透かしている様に感じた。 そのせいか、千紘さんへの罪悪感で心が少し苦しくなった。 王子様、早く会いたい。 なんて最低な願いだろう。 罪悪感を払拭したいが為に会いたいなんて…。     
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