第2章 キジマハヤオ

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元カレの存在を知ってしまった私は、千紘さんに今まで感じたことのなかった様な罪悪感を感じながらこれから生きて行くのだろうか? 普通は昔付き合った人のことを忘れて、新しい人のことを愛することができるものなのだろうか? 誰しもがこんな罪悪感を恋人に抱くのだろうか? 私の記憶はいつでも靄が立っている様な感じだ。 あきの事や家族のこととか最初は確かにわからない事が多かった。 それでも、事故の前からずっと付き合っていたこともありある程度思い出すことができたのだ。 そんな私にとって事故の一年前に出会っただけのキジマハヤオについて思い出すのはかなり難しいことだった。 でも、だからなのか思い出せない彼が気になってしまう。 「あきのばか。思い出して欲しくないって言っても、気になるんだよ。」 このモヤモヤが晴れるわけでもないのに一人悪態をついた。 その夜、私はいつもの様にラジオをつけた。 カチッ 『-ーーーーーーー続いてのリクエストはキジマハヤオさんよりスピッツで「正夢」。』 驚くことに今日もまたキジマハヤオのリクエストメッセージは読まれていたのだ。 『えー、「今日から君が毎日僕の病室に会いにきてくれた。僕はもともと友達と言ったら隣のベットにいる親友しかいなかったから、君とうまく喋れなかった。本当はもっと君が笑ってくれる様な話をしたかったし、素直に気持ちを話したかった。そんな僕の気持ちを表す様な曲がこの曲です。」・・・・』 今日も読まれてた…。 これは間違いなく昨日のメッセージのキジマハヤオだと私は確信していた。 なぜなら、メッセージの感じが昨日と同じだったからだ。 でも、同時に普通2日連続で読まれるものなのだろうか?という疑問が浮かんだ。 その後からどんどんこのキジマハヤオへの疑問が膨らんでいった。 そして、その中でも、私にとっての一番の疑問は ”あなたは誰?” ”君とは誰のこと?” だった。 赤の他人かもしれないのに、この夜も胸さわぎが止むことはなかった。
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