第2章 キジマハヤオ

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私はあれからもずるずるとやっぱりラジオを聴いていた。 そして、その間中キジマハヤオのメッセージが読まれないことはなかった。 不思議なことに、私は次第に読まれる思い出に心が癒されるようになっていた。 でも、翌朝にはそのラジオが何やらおかしいことを再び認識するのであった。 ある日、私はあきにラジオのことを相談することを決意した。 本当はラジオのことをキジマハヤオのことを思い出して欲しくないあきに話すのは怖かったが、誰にも相談せずにはもういられなくなっていた。 「あき、あれからラジオをずっと聴いてるんだけどやっぱりなんかそのラジオおかしいの。」 あきは呆れた顔をして、 「野崎、まだ聴いてたの?!」 とやっぱり言った。 「だって、寝る前の日課だからしょうがないじゃん。」 そう言い訳をする私にあきは 「はあー。それで何が今度はおかしい訳?」 と冷静に答えた。 「あのね…、この前話した…キジマハヤオのリクエストメッセージ毎日読まれてるの。」 「何?まだキジマの事気にしてるの?」 私は、そう言ったあきに相談するのはやはりマズかったかなと少し後悔した。 「キジマハヤオのことっていうか、その…、毎日同じ人のメッセージって読まれるものなのかなって思って。」 そう言う私に相変わらず冷静な顔であきは 「なるほどねー。単にそういうコーナーなんじゃない?」 と言った。 でも、そんなあきの意見を私には納得することが難しかった。 そして、きっとそんな気持ちが顔に出ていたのだろう。 あきは、 「わかった。なら野崎、私もそのラジオ今日聞いてみるよ。」 と思いもよらないことを言ってきた。 「えっっ!」 「だって、あんたそのラジオが気になって最近仕事中もボーっとしてるし。野崎がそこまでお思うほどそのラジオがおかしいのか気になるじゃない。」 そんなあきの優しいのか非難されているのかわからない言葉に、私は不覚にも安心を覚えた。 それは、自分がだけが変な体験をしてるみたいな感じがしてほんの少しだけ怖くなり始めていたからだった。
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