第1章 6月5日の雨の日

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そして昼休みになって、私とあきはシエラにきていた。 「一ヶ月ぶりだな。ここきたの。」 「えっ!野崎先月来てたの??」 「うん。千紘さんにディナー誘われて。」 「そっか…。二人ちゃんとうまく行ってそうで良かった。」 本当にホッとしたような顔であきが言うもんだから、 「そんなに私たちってあきに心配かけてたの?」 と、つい聞いてしまった。 「あなた達っていうか、野崎が心配だったの。婚約が決まった後からなんとなく元気がない気がしてたから。事故の前のことなんか思い出して、婚約について悩んでるのかなって思ってたの。」 そう言った後、あきはしまったという顔をした。 実は私は、大学三年の時事故にあっていた。そのせいか、事故以前の記憶が曖昧なのだ。特に事故の前後は全く覚えていない。 「どうして、私が事故の前のことを思い出す事と婚約を躊躇することが繋がるの?」 「あ、その。なんていうか…。」 あきはかなり困ったようにそう私に言った。 「別に怒ったりしないから、言って。」 私がそう言うと、あきは観念したような顔をした。 そして、何かを決意したように 「実はね、大学の二年のとき野崎には付き合っていた人がいるの。」 と言った。そんなあきの突然の告白に私は 何それ。そんなこと、1ミリも覚えていない。 と思った。 そして、あきは続けて 「野崎は、その人のことすっごく好きだったの。でも、同時にそれは野崎にとって辛い恋だった。だから、まあ、思い出さない方がいいよ。」 と訴えるような目で言った。 しかし、それを聞いて私の心は何故かとても悲しい気持ちになった。 そしてそれは、あきの珍しく否定的な助言じゃなくて辛い恋という言葉に対してだった。
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