第1章 6月5日の雨の日

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「『わかった。ありがとうございます。』っと。」 そして定時になり、私は近くのカフェの前に行った。 「洋子!」 あー、私の王子様だ。 その姿を見た私は安心して千紘さんに駆け寄った。 「千紘さん!待ちましたか?」 「いや、さっき来たところ。」 なんて出来た答えだろう。 「今、なんて出来た答えだろうって思ったでしょ。」 「えっ!」 「嘘じゃなくて、本当にさっき来たばっかりだから。」 「そうなんですね。」 「でも、仕事が早く終わったっていうのは嘘かな。早く洋子に会いたくて仕事頑張って終わらせて来たんだ。」 千紘さんは優しく微笑みながら言った。 「何やってるんですか!?なら、私が千紘さんに会いに行ったのに。」 「なんだ。それもそれで嬉しいかも。」 そんなくさいセリフをさらりと言ってのける千紘さんに、私の胸は高まった。 なんて、チョロいんだ。自分。 と思いつつも、赤くなった顔を隠すように下を向いた。 「実は、今日渡したいものがあるんだ。だから、どうしても会いたかった。」 そう言う千紘さんの声が上から聞こえた。 「なんですか?」 と言いながら、私は顔を覆いながら顔を上げた。 そこには、さっきの私のように少し赤くなった顔をした千紘さんがいた。 そして、 「ここじゃなんだし、僕の家に行こうか。」 と言った。 「適当に座ってて。」 「はーい。」 久しぶりに来たけど、やっぱりいい部屋に住んでるよなあ。しかも、整理整頓がきちんとされてて本当に完璧人間なんだなあと、しみじみ思った。 そして一枚の写真が目に入った。 それは病院のベットの上に座る綺麗な顔をした男の人と彼と笑顔で肩を組んでいる千紘さんだった。
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