第2章 キジマハヤオ

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第2章 キジマハヤオ

その翌朝、私は未だ昨晩の出来事に頭を悩まされていた。 ラジオDJの言っていた様に50代くらいの男の人だったら明らかに私の彼氏ではないだろう。 それでも何か突き動かされるものがあるせいで、ラジオのキジマハヤオという男が私のかつての恋人でないと否定仕切れないのだ。いや、単に自分が否定したくないだけかもしれない。 だって、かつての恋人からのラジオ越しのメッセージなんて女の子だったら少しは憧れるし。 まあ、そのためにはそのメッセージが自分宛であることがわかってなければならないけど。 そんなことを考えながら、会社に行く準備を始めた私。 相変わらず私の髪の毛は今日も悲惨な状態だった。 「梅雨はまだ始まったばかりかあ…。」 と外の雨を見て呟いた。 会社についてすぐにあきの元へ向かった。 「あき!聞いて!」 「何よ、どうしたの?」 「昨日ね、ラジオを聴いてたらキジマハヤオっていう人のリクエストメッセージが届いてたんだよ」 「キジマハヤオ?へーそうなんだ。」 「えっ?それだけ?」 すると、あきは不思議そうに 「だって、元カレと同姓同名なだけじゃない?」 と言った。 それはそうかもしれないけど… 「あのね、野崎。間宮あきっていう人の一人や二人日本中・世界中探せばいるよ。そもそもラジオだったら、ペンネームかもしれないじゃない。」 「確かに…。でもね、なんかメッセージも違和感があったの。」 「どんなよ?」 「6月5日君と出会った、的な感じだった。まるで6月5日にメッセージが読まれることを知ってたみたいに書かれてた。」 あきは怪訝そうにしながらも 「そんなことってあるの?でも…、仮に野崎のいう様に今年の6月5日に読まれることを知りながら書かれたものだったら、それはますます”キジマハヤオ”ではない。」 と言い切った。 「どういうこと?」 そして、そう返した私にあきは困った顔を向けた。 そこで、 「間宮!!会議行くぞ。」 という先輩の声が聞こえた。 それをいいことにあきは 「じゃあ、またランチで!」 と言ってそそくさと行ってしまった。 さっきのあきの発言のせいで、私の中ではますます謎は深まるばかりだった。
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