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子供の頃はみんな、お嫁さんになれるって思っていた。
たったひとりの王子様と、出会って、幸せになれるとも。
誰もがその権利を持っているのだと信じて疑わなかったし、自分もなれると思い込んでいた。
だけど現実は残酷で、謙虚で慎ましい人間には、幸せは来てくれない。
むしろ、ガラスの靴が割れても接着剤でくっつけるような、そんなしたたかさのある人間のほうへ幸せは、好んで向かって行くらしい。
がつがつしないと、幸せが得られない。家族も作れない、子どももできないし、勝てない。
図々しいところがないと、いろんなしがらみからもきっと、逃れられない。
いい子だとほめられたい願望が強かった私が、そんなことできるはずがない。
ついつい、人のせいにするくせができる。
いや、人のせいじゃなくて本当のことじゃないか。
まわりの都合で吐き出されるひとこと、あのひとこと。
たった九文字の言葉が、私をますます、素直から遠ざけてゆく。
キャラじゃないよね。
たった九文字なのに、たった九文字のくせに。
世間が見ている「幸せ」を得るために必要なしたたかさや、図々しさ、計算高い策略をすべて粉々にしてしまう。
今日の服、似合うけれどキャラじゃないよね。
ネイルとか、キャラじゃないよね。
甘えるとか、キャラじゃないよね。
あんたにわかるの?あんたたちに決められる権利なんかあるの?
ふたりで行くはずだった、部屋には私ひとりだけ。
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