キャラじゃないよね

3/5
3人が本棚に入れています
本棚に追加
/5ページ
 子供の頃はみんな、お嫁さんになれるって思っていた。  たったひとりの王子様と、出会って、幸せになれるとも。  誰もがその権利を持っているのだと信じて疑わなかったし、自分もなれると思い込んでいた。  だけど現実は残酷で、謙虚で慎ましい人間には、幸せは来てくれない。 むしろ、ガラスの靴が割れても接着剤でくっつけるような、そんなしたたかさのある人間のほうへ幸せは、好んで向かって行くらしい。 がつがつしないと、幸せが得られない。家族も作れない、子どももできないし、勝てない。 図々しいところがないと、いろんなしがらみからもきっと、逃れられない。  いい子だとほめられたい願望が強かった私が、そんなことできるはずがない。  ついつい、人のせいにするくせができる。 いや、人のせいじゃなくて本当のことじゃないか。 まわりの都合で吐き出されるひとこと、あのひとこと。 たった九文字の言葉が、私をますます、素直から遠ざけてゆく。  キャラじゃないよね。  たった九文字なのに、たった九文字のくせに。 世間が見ている「幸せ」を得るために必要なしたたかさや、図々しさ、計算高い策略をすべて粉々にしてしまう。    今日の服、似合うけれどキャラじゃないよね。  ネイルとか、キャラじゃないよね。  甘えるとか、キャラじゃないよね。  あんたにわかるの?あんたたちに決められる権利なんかあるの?  ふたりで行くはずだった、部屋には私ひとりだけ。
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!