放課後の雨

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放課後の雨

「あーあ、降り出しちゃった」 わたしは昇降口で空を見上げた。一日じゅう、厚い雲に覆われていた暗い空。遂に大泣きしてしまった。先生の用事を手伝っていなければ、雨が降り出す前に家に着いていたはずなのに。 グラウンドの前を横切って、びしょ濡れになるのをむしろ楽しみながら男子の集団が帰っている。一体何が嬉しいんだか。 呆れているわたしの横に、すっと人影が並ぶ。顔だけ向けると、同じクラスの杉谷くんが立っていた。 「わっ、びっくりした。いつからいたの」 人が驚くのを愉しんでいるのか、彼は吊り上がった猫のような大きな目を細めて笑った。
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