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てるてる坊主の再会
スマホの画面に表示されているのは知らない番号だった。迷惑電話だったりかけ間違いも多かったけれど、わたしは必ず電話に出る。それが杉谷くんからかもしれないからだ。
「もしもし」
「あ、あの!」
声の主は男性だった。とても慌てていて、緊張したような声だった。エレベーターの階数が下がっていき、扉が開く。外に出ると電波が入りやすくなった。
「春宮輝美さんの携帯ですか」
思わず足が止まる。次の言葉を瞬間的に確信した。
「杉谷です」
胸が熱くなる。わたしは急に噴き出した額の汗を拭った。深呼吸し、声が上ずらないように気をつけた。
「連絡、待ってた。ずっと」
声が震えてしまった。
「お待たせ」
小さく笑ったような、ほっとしたような声で彼は言った。きっとあの猫目を細くしているに違いない。
「今、帰ってきてるんだ。会えないかな」
「どこにいるの」
「ええと、市内の◯◯モールっていう所、分かる?」
それは今わたしがいる、まさにそこだった。わたしははっとして、エレベーターに向き直った。そして上向きの三角ボタンを激しく連打する。階の表示された数字が下がるのをイライラして待ち、扉が開いたと同時に中に駆け込む。すぐに五階のボ
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