第Ⅳ部 栄誉の代償

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 錬金術の達人であり、悪魔と契約して名声を得、『悪魔の威圧』や『偉大にして強力な海の霊』などの魔導書を執筆したと噂されるポーラニア人の大学者ファウスト博士が、新天地への旅行中、サント・ミゲルに滞在しているという情報を闇ルートで入手したマルクは、その写本を作らせてもらえるよう頼みに彼のもとを訪れる。  また、マリアンネも錬金術を大学者から学べると意気揚々。  身分を隠して宿屋に泊まっている妙に若々しい博士(※悪魔の力で若返っている)とその怪しげな従者に会うことは容易にかなったが、博士は写本の見返りに、エウロパ世界へ帰るための船と護衛をマルクに頼む。  彼は件の魔導書執筆や悪魔崇拝の嫌疑をかけられ、今や異端審判士に追われる立場であり、この新天地でも来訪を察知され、逮捕に向けて羊角騎士団が動き出しているらしい(居場所を知られたのは色惚けジジイにもイサベリーナに一目惚れし、大学者である自分の名前を出して口説こうとしたため)。  魔導書がもらえるならお安い御用と、その依頼を引き受けたマルクら禁書の秘鍵団は、ファウスト博士と従者を乗せて旧大陸へ旅立つ。  一足遅れで博士が逃亡したことを知り、その後を追うハーソンら羊角騎士団。  逃亡者ではあるものの、陽気に船旅を楽しむ一行。  その間、露華、マリアンネに好意を抱いた博士の恋を成就させたり(二人にも博士に恋愛感情を抱かされる)、また、魔女の宴〝ワルプルギスの夜〟の開かれている島を訪れたり(そこへ追いついた羊角騎士団も乱入して大騒ぎに)、オリンピアの神々がいる古代神殿の遺跡に立ち寄って、絶世の美女ヘレネーと露華、マリアンネが博士を巡ってギリシャ神話の〝パリスの審判〟並の火花を散らしたり(その古代遺跡で、マルクは魔導書『魔術のアルバテル』を得る)と、怪しげな従者はファウスト博士にいろいろな娯楽を提供し、執拗に彼を悦ばせようとする。
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