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そして、処刑当日。
インスタムロス要塞内の刑場で聴衆が見守る中、片目は潰れ、鎖でグルグル巻きに縛られた上に呪文も唱えられないよう猿轡までされたマルクが絞首台へ登ろうとしたその時、群衆に混じって身を隠していた秘鍵団の団員達が彼を救うべく飛び出してくる(各人、この時初めて自分以外の者もその場にいたことを知る。マリアンネのゴリアテ・ツヴァイは木馬型戦車形態で、お祭り騒ぎな刑場の傍らへモニュメントに偽装されて置かれる)。
しかし、ハインリヒティウスはそれを見越して、万全の警備を整えて待ち構えていた。
前回、秘鍵団を壊滅させたイェホシアス会の魔法修士と、大勢の番兵に取り囲まれた団員達を見て、「これほどうまくいくとはの。まさに飛んで火にいる夏の虫…」と、逃した秘鍵団全員を捕えられたことを笑うハインリヒティウス。
だが、囚われの身であるはずのマルクもなぜか肩を揺らして笑い出し、「こっちこそ、こんなにうまくいくとはだよ。おかげで一人残らず集めることができた」と愉快そうに告げる。
マルクが自ら出頭したのは、こうして注目される一大イベントを開いて散り散りになった仲間達を集めるためであり、ハーソンに偽のチラシをバラまかせたのも彼の仕組んだものだったのだ。
また、悪魔を召喚するためのペンタクルや魔法円はなく、身動きも、呪文を唱えることさえできない不自由の身でありながら、不思議なことにも鎖と猿轡を自力で解いてしまうマルク。
それを見て不思議がるハインリヒティウスに、「もとから脱獄の能力がある悪魔を自分に降ろしてたんだよ。こうやってね」と、彼は瞑っていた片目を開き、義眼に描かれたソロモン王の72柱の悪魔序列44番・掠奪候シャックスの印章を見せる。
マルクは漂着したシンドゥーカのタントラ寺院において〝神人合一〟する密教の修行法を学び、悪魔を自身に降ろしても、けして支配されない術を身に着けていたのだ(※以降、召喚魔術には72柱各悪魔のペンタクルセットに代わり、印章入りの義眼セットを用いるようになる)。
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