ピアノの魔術師

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「勝負って、何の？」

興味が湧いたわけじゃないけど、念のため聞いてみた。

「ピアノ」

「ピアノ！？　はぁ？　あんたバカじゃないの？」

教師という立場を忘れて、思わず本音が出た。

「ぶっ。今バカって言った？　浅井ちゃん」

佐伯はおかしそうに笑うと、いつもの不敵な笑みを浮かべて私の方を見下ろす。

「だ…だって、ピアノで勝負って」

「あれ？　もしかして『あんたピアノ弾けないくせに』とか思ってる？」

「……え、違うの？」

その言葉に佐伯はさらにおかしそうにニヤリと笑った。