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第1話 日本の神々と仏教
6世紀。この国に政府主導で仏教が導入されたことにより、古来から住まう日本の神々と、新興宗教である仏教との対立が始まった。
政権の保護を受けた仏教は、人数こそ少ないものの強力な法力を持ちしかも凶暴であった。人々に崇められてのほほんと暮らしてきた日本の神々は、いきなり現れた強敵に劣勢を余儀なくされた。
しかし神々は800万ともいわれる圧倒的な戦力数でゲリラ戦を仕掛け、戦いは長期化した。
約100年続いたその戦いに、終止符を打ったのが最澄(伝教大師)である。
最澄は、神々を仏教の一部とすることで融和をはかった。それが神仏習合である。例えば、大国主命は大黒天に、天照大神は観音菩薩(後に大日如来)にといった具合である。
それから約1200年、仏教と神々との蜜月時代は続いた。しかし、それも崩壊するときがくる。
もともと神仏習合は、仏教の下に日本の神々があるという考え方であった。神々のほとんどは権力にさほど斟酌しない性質であったため、たいした抵抗もなく受け入れていたのだが、江戸時代に仏教の腐敗が進んでしまったのだ。
争いごとが嫌いで、のほほんと暮らすことを是とする神々でさえも容認できないほどに。
そのたまりにたまった不満が怒りとなり、明治維新を契機に一気に火を噴いた。それが廃仏毀釈運動である。多くの仏像や寺院が破壊され、教典・仏具が焼かれた。
だが、その運動が激しかったのはほんの数年であった。もともと怨みを長く持ち続けられる者たちではなかったのだ。暴れてすっきりしゃっきりしたところで登場するのが岡倉天心である。
明治30年。日本文化財の大恩人である岡倉天心によって文化財保護法が成立すると、仏教と神々はギクシャクしながらも対等で穏やかな関係に落ち着いて現在に至るのである。
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