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第4話 住民登録
えっちらおっちらどっちらほいさっさ。どのくらい歩いただろうか。リヤカーはそれほど重くはないけど登り坂はちょっときつかった。
山をひとつ越えると突然に景色が開けた。道の両側はもじゃもじゃの頭を少し垂らした植物が群生している。キラキラ光ってちょっときれいではあるけれど。
「これは刈ってもポイントにならない?」
「それはエノコログサといって、ここにもともと生えていた植物だ。刈っても徳にはならない。現世にも同じものがあるだろ」
「もともとの植物もあるのね、ここ」
「イノシシもタヌキもいるし、食べられる木の実もある。キノコも採れるぞ。そのエノコログサだって食用だ」
「え? ここではこんなものを食べるの?」
「そのもじゃもじゃの間に実が詰まっている。それを取り出して炒って食べるとけっこういけるぞ」
まあ、私には関係ないことだからいいけど。ここはあまり良い食生活ではないようだ。早く帰ってスガキヤのラーメンを食べに行こうっと。部活帰りのラーメンって最高よ?
エノコログサの脇道が川にぶつかり橋を渡ると、そこにはいかにもザ・日本家屋という感じの町並みがあった。
「ああ、ここも見覚えがある」
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