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第2話 うつしよの街
僕の住む街は、夢でできている。
僕はこの街で生まれた。ある日突然に。
ボウフラみたい、とか言わないように。
付喪神みたい、と言うのならギリ受け入れても良い。
現世には人々の信仰を集めるものがある。それは仏像であったり、古い建築物であったり、ただの大きな岩や珍しい古木であったりする。
それらが長い長い時間をかけて多くの人に親しまれることによって、生まれる世界があるのだ。
それが、僕の生まれたこの街であり、僕らでもある。物質世界とは異なり、人々が長く持ち続けた「想い」によって生まれた世界だ。それを僕らは夢(写し世)の街と呼んでいる。
僕はただの木だった。樹齢400年ほどの木曽ヒノキである。それを10ヶ月もかけて不動明王に彫った男がいたのだ。名を善信という。貧乏で無名の仏師であった。その像は寺院の本尊として大切に保管され、近隣住民に愛された。
だから僕はこの世界に生まれたのだ。この世界では僕はまだ新参者である。多くの先駆者たちがいるが、この世界の最初のひとりは2,000年以上も前の人であるらしい。
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