1

54/67
前へ
/71ページ
次へ
真山にムカムカしながら午前中の授業を終えると、僕はいつものように中嶋のいる8組に向かった。 「おー矢野。久しぶり」 去年同じクラスだったやつらが珍しく8組に数人集まっていた。 懐かしい喧騒が教室内にあって、思わず僕も笑顔になる。 同じ階にいても意外に会わないもので、なんだか懐かしさもあいまって、つい、久しぶりだな、という言葉が口をついて出てきてしまう。 購買か学食にでも行くか、という話になっていたところに僕と中嶋も入り、それぞれのクラスの話をしながら僕らは1階へと向かっていった。 「そういえば矢野。お前、昨日女に殴られたってマジ?」 階段を降り始めたところで、今年は3組になった巻(まき)が言う。 「お前何したんだよ!」 「また女か!」 ゲラゲラと大きな笑い声が階段ホールに響いていた。 「違うって。何もしてねーし。俺は無実だ」 そう言い返すけれど、矢野ー、という笑い声が僕の声をかき消す。 「殴ったやつ、あれだろ? 噂の――」
/71ページ

最初のコメントを投稿しよう!

108人が本棚に入れています
本棚に追加