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「おい、浩司」
少し不機嫌な声でそう言いながら、純太が両脚を俺の腰に絡みつけグイと引き寄せる。
「いつまでもビビってないで、ガツンと来いよ。先生にもお墨付き貰ったんだから」
いや、そういうお墨付きじゃないだろう。
今日は純太の3年目の定期健診の結果が出た日だった。癌を患った者にとって3年目の検診は大きな意味を持つ。癌の再発は3年以内に起こることが多いからだ。
だから俺たちにとっても、今日は特別な日だった。
「何も懸念材料はありませんね。次の検診はもう1年後でいいでしょう」
医師のその言葉がどれほど嬉しかったか。
二人でちょっと高めのステーキ屋で祝杯をあげ、ほろ酔い気分で帰って来た。機嫌よく揺れながら鼻歌を歌い続けている純太を抱えてシャワーを浴び、ベッドへもつれ込んだところだ。
「お前、俺が頭くり抜いてから、いつでも壊れ物みたいに扱い過ぎ」
片方の口角を上げて色っぽく笑いながら、俺の唇を指でつうーっとなぞる。
「純、酔ってんな」
「いんにゃ。いっつもお前にセーブさせてんじゃねえかって・・・もう平気なんだから、気ぃ遣うな。それとも病気なんかした奴じゃ辛気臭くって、燃えねえ?」
確かにどこか繊細な工芸品みたいなイメージは俺の中にあったかも知れない。純太が壊れてしまうことが俺はなにより怖いから。ガサツな俺が乱暴に扱って傷でもつけたらって。
「まさか。美味い肉と酒の後は、お楽しみのデサートだろ。今日は気分がイイからガッツリいただこうか。途中で泣いても知らねえよ?」
そんな言葉を吐きながらも、俺の腕の中に健やかな純がいるという喜びを噛み締める。
「俺も今夜は最高に気分がいいんだ。ほら、早く、頭が痺れるぐらいのキス、くれよ」
純太も挑発するような台詞を吐きながら、その瞳にはただただ俺への愛しみが溢れている。
ずっとこの幸せが続きますように。
そう祈りながら赤い唇に口付けた。
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