西暦2050年

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僕の名前はロジェ ルブランシュ。僕はロボットメーカーのオフィスで働いている。僕の仕事はプログラマである。新しいロボットを開発するためにパソコンの画面を見る。 基本的なプログラムに修正を重ねて新商品とする。つまり、既にある雛形に少し手を加えるのが仕事だ。僕が作ったプログラムを元に工場が稼働する。 工場ではロボットが働いている。ラインで生産・監視するのもロボットだ。人間はというと、ラインやロボットのメンテナンス役に過ぎない。つまり、工業大学・高校を卒業した男しかいない。 昔なら女がいた事務所も今はロボットが働いている。生身の人間に見せかけた受付ロボット、お茶汲みロボット、コピー取りロボット、翻訳ロボットと挙げたらキリがない。セクハラ撲滅運動一環運動で、会社に生身の女を置かないことにしたからだ。 では、女は何処へ行ったのだろう? 風俗店にしても、ロボットの方が効率がいい。今は生身の人間と同じような感触を出せるために、性交さえロボットにさせている。病気にならないし、感情が湧かないから後腐れなくて一石二鳥である。 女は、子作りロボットと化していた。家庭では家事ロボットが一家に一台あるので、家事をしなくて済む。そのロボットは育児・介護もするから、完全に家事から解放された女性たちは、スポーツや芸術に時間を過ごすようになった。仲の悪い相手にはコピーロボットで対応させるので、舅・姑・小姑やママ友とのトラブルも回避できる。 女性たちは日頃の腕を発揮するためにいろんな企画に参加する。つまり、才能ある者は芸術で稼ぐ。才能がない者は夫の扶養に入る。 二極化した女性たちは、婚活にしのぎを削る。生物的・芸術的な子育てだけに役割が限定されているので、その相手が今後の人生の鍵を握る。 その僕も家には妻子がいる。僕の給料だけで生活する妻のドミニクは、子供との関わり合いだけが仕事だ。僕が開発したロボットのおかげで余計な労働をしなくて済むので、子供と一緒にスポーツをする。むしろ、そうしないと肥満体になる。 世の中の女性たちを檻の中の動物にさせてしまった僕は、これでいいのかと思いながらも暮らしに便利なロボットを今日も開発するのである。
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