1.赤いレインコート

3/7
前へ
/18ページ
次へ
「……しずく。」 雨音で消されるんじゃないかと思うほど小さな声で呟いた。 少し嬉しかった。 少女…しずくちゃんはうつ向いたままだけど。 「しずくちゃんは何を…ガシャーーーーーン!」 私が再び何をしているのか聞こうとしたとき、辺りは白くなり、まるで閃光彈のような大きな雷が鳴った。 「しずくちゃん、家においで!」 雷の中、幼い少女をほっとくわけもなく腕を引っ張り家へいれた。 親も共働きで誰もいない家に入ると雷の音がより大きく感じた。 玄関にしずくちゃんを待たせ、私はそそくさとタオルを持ってきてを拭いてあげた。 あんな雨の中にいれば濡れていると思ったから。 しかし不思議なことに全然濡れていなかった。
/18ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加