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「……これは何だ?」
瀬名は小首をかしげた後、下駄箱の扉を閉めて『八丁堀瀬名』という自分のネームプレートがかかっているのを目視した。
「俺のだよな」
この下駄箱が自分のものが明らかになったところで、もう一度開けてみるも、イワシの頭は相変わらず鎮座していた。
どうやらシュレーディンガーのイワシではないようだ。
このイワシの頭には何か意味があるのだろうか?
ただのいじめなのだろうか?
それとも、何かの警告なのだろうか?
イワシの頭を入れる際に、俺の上履きを移動させたのか、上履きに当たらないように気遣った形跡が見受けられる。いかんせん、イワシの生臭さが下駄箱の中に充満していた。
誰かのイタズラと想定しよう。
この俺に、イタズラをしかけるようなできる向こう見ずな奴はいるだろうか。
数名の顔が思い浮かんだが、どいつもこいつもこんな陰険な事をするような奴ではない。やるなら、ほぼ全員が正々堂々と来るはずだ。
それとも、このイワシの頭は新手のラブレターなのだろうか。
ラブレターの類いならば、下駄箱に過去にそれなりに入っていたが、ラブレターがイワシの頭というのは初めてであった。仮にこれがラブレターであったとしても、俺には彼女がいるから、俺の心を揺さぶるほどの魅力を持っているのか、これだけでは分からないから付き合う気さえ起きないだろう。
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