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「……」
しばらくそのイワシの目とにらめっこをしていたのだが、時計を見ると、そろそろイワシとのにらめっこが時間切れである事を告げていた。
仕方なくイワシの頭をつまみ上げて、ゴミ箱へと放り込み、多少生臭くなっている上履きを履いて、教室へと向かうことにした。
チャイムが鳴るギリギリのタイミングで教室に滑り込むようにして入るも、クラスメイトには変わった様子がない。
あのイワシの頭はたまたま俺の下駄箱の中に入っていたのだろうか。
捨てるのが面倒だからと俺の下駄箱にたまたま放り込んだとも考えられるが……。
朝のホームルームが始まり、入って来た担任が何やら話をし始めるも、俺はとある事に考えを巡らせていた。
(こういうのは、あいつに相談してみるのが一番か。イワシの頭に潜む背景まで解決してくれそうだしな)
八丁堀瀬名は、古くからの友人であり、同じクラスにいる月定邦雄の事を見やった。
ここからだと後ろ姿しか見えないが、何やら窓の方に顔を向けて、担任の話も聞かずにぼうっと何かを見つめているようではあった。
意外と性格が悪くて、恨まれ役を買う事の多い友人ではあるが、こういうワケが分からない事に関しては何かと頼りになる奴だ。将来は探偵か何かになった方が幸せになるのではないだろうか。
昼休みにでも、昼飯にでも誘って相談してみるとしようか。
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