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「下駄箱の中にイワシの頭が……」
「で、何か意味があるのか?」
人気がない校舎裏のベンチに並んで腰掛けて、俺は弁当に手を付けながら、瀬名の話を聞いていた。
普通だったら、嫌がらせか何かとしか捉えないだろう。
そうではなく何か意味があるのでは、と穿った見方をするのは瀬名らしいといえば瀬名らしい。
それは、八丁堀という名前のせいでもある。とある時代劇で名前では呼ばれずに『八丁堀』と呼ばれた登場人物がいたのだが、名前ではなく、そう呼ばれる事に興味をもったせいで物事には裏表があると見るようになったりした経緯がある。表の顔と裏の顔、半か丁か、といったところだ。
「で、なんか意味がありそうか?」
瀬名は購買で買ってきたパンをかじりながら、素っ気なく訊いてくる。
興味があるのかないのかが感情に出ていないので表毛抜けしてしまうが、気がかりな事でもあるのだろうか。それとも、それで何かを見落としてしまうのではないかという事を危惧しているのだろうか?
いずれにせよ、今の瀬名には、見落としてはいけない『何か』があるのだろう。
一体、見落としてはいけない『何か』とは何なのか。
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