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プロローグ
「その手を離しなさい! 嫌がっているじゃないの!」
「おっさん、その手を離せよ! 何やっているか分かっているのかよ!」
「あああ? そいつが俺に色目を使ってきたから誘いに乗っただけだ!」
「こんなに怯えているんだぞ? お前、いい加減な事を言うなよ!」
「さてはお前ら美人局だな? 俺から金を絞り取ろうって気か?」
「あなたこそ、なにを言っているんですか! こんなに強く腕を掴んでいたから、この娘の腕、赤くなって腫れているじゃないですか!」
音を上げると、君の声が澄んで聞こえる。
こんなにも、こんなにも愛しているのにどうして気づいてくれない。
気持ちは形に表れないから、気づいてさえもらえていないのか。
「だから、お前ら、俺から金を脅し取ろうとしてるんだろうが!」
「何を言ってるんだよ、お前は! なら、警察を呼べばいいだろうが! 美人局じゃない事くらい、それで分かるだろうが! お前が強引にホテルに連れ込もうとしていた事くらいそれで分かるだろうよ!」
「大人ならば恥を知りなさい! 恥を! こんな娘に痛い思いをさせて!」
もっと叱って欲しい。
感情がこもった声を聞いているだけで幸せな気分になれる。
そこには思いがこもっているのだから。
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