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衣装を選んでいる時のお姉ちゃんは幸せそうで、白い頬を幸せ一杯のバラ色に染めた満面の笑顔に、こっちまで胸が一杯になる思いだった。
安生優花─────
私の大好きな、優しくて綺麗な優花お姉ちゃんは、三年間愛情を大切に育み合った彼氏さんと、二週間後に結婚する。
───── ……
一人暮らしの部屋を引き払う前にと、私は会社の休日を利用して、お姉ちゃんのマンションに泊まりに来ていた。
優花と、立花。私達は、四つ違いの姉妹だ。
お姉ちゃんが27歳で、私が23歳。社会人になった今も度々予定を合わせて遊ぶくらいには仲が良い。部屋には、私の着替えや化粧品なんかも置かれている程だ。それも、今日で終わりなのかとふと感じると、酷く寂しい。
そんな気持ちを振り払うように、今日はずっと観たかった映画を二人で観た後にカフェに寄って、沢山ショッピングをして帰って、それから一緒に夕飯を作って食べた。
……こうしてお姉ちゃんに教わっていなかったら、今も料理なんて、きっと全く出来てなかったに違いない。
(こんな風に過ごす事が無くなってしまうわけじゃないって理解はしているけれど、ここで過ごすのは、最後になっちゃうんだな……)
いつものようにリビングのソファベッドへ横になったものの、深夜に微睡みの波から引き戻されて目が冴えてしまった私は、少ししんみりとしながらキッチンへと向かった。
「 ─────、…… 」
ふと、足を止める。
何か声が聞こえた気がしたからだ。
ここは1LDKだ。私が寝ていたリビングからキッチンへ向かうには、扉を隔てたお姉ちゃんの部屋の前を必然的に通る事になるから、声がするとなると、お姉ちゃんが私に何か話しかけて来たのだろう。
「あ、お姉ちゃん……起こしちゃった? 今、何か飲み物用意するところだけど……」
形ばかりの小さなノックをしてから扉を開けて顔を覗かせる。空間を隔てる扉が開かれて、お姉ちゃんの声がよりはっきりと聞こえて来た。
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