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「まぁもう仕方ねぇな、別にどうしても嫌ってんじゃないし」
ちょっとソワソワはするんだけど。もう搭乗前のラウンジの時点で高級なバーとかレストランとかみたいな感じだし、乗ってからもキャンピングカーに乗ったみたいなドキドキを感じるし。
服装の違うアテンダントに案内された席は、彼のすぐ隣だった。
(あー、こんな感じだったわ)
彼を尋ねて出かけていった日を思い出す。その空間に緊張すると同時に、どうしても庶民感覚か肌についてる俺には、そこが天井がないカプセルホテルみたいに見えて仕方がなかったのだった。
席はフルフラット、テレビあり、収納あり。ご飯はカプセルホテルとは違って完全フルコースだけど。
(うん、2回目だし、カプセルホテルと思えばイケる!)
我ながら、もっとこの空間を満喫できないものなのか。貧乏が板についた庶民だから仕方ない。
「ハニー、俺はとんでもない失敗をしてしまった」
彼なんかは、座った途端に泣きそうな顔をしてる。
「なんだよ、なんか忘れ物でもしてきたのか?」
うちで荷物の最終チェックしたときは、自信満々に大丈夫だなんて言ってたくせに。どっちにしろもう後戻りはできない。
彼はそっと俺に手を伸ばしてきた。
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