569人が本棚に入れています
本棚に追加
「俺の腕につかまっていてくれ」
優しく微笑みながら言う。その笑い方に安心したのもあるけど、1人で歩けって言われたら緊張しておかしな歩き方をしそうで、しっかりと彼の腕にすがりついた。
「パートナーのいる招待客は、こうしている方が自然で好まれるんだ」
「そう、なんだ」
「俺がお前に触れていてほしいのもある」
「ふっ……笑わせんなって」
兵隊はニコリともしない。少し緊張感を伴うべきなんだろうけど、緊張がほぐれた。
堂々と赤絨毯を進む彼に寄り添い、少しでも彼に相応しいように振る舞いたくて胸を張って歩く。正直、男同士で変に思われないかな、と思わないところがなくもないけど、彼と結婚した頃に比べたら、その気持ちはかなり薄まってきていた。
木の扉をくぐる。
青っぽい白の大理石で床から天井まで彩られたエントランス。その天井も20メートルくらいあるだろうか。目の前には踊り場で二手に分かれたでかい階段。真っ直ぐに赤絨毯が敷かれていて、青っぽさと対照的でやけに目立っていた。
その赤絨毯の脇には、外とは対照的に、燕尾服で白手袋の使用人みたいなおっさん達が、ずらりと並んでいた。
「この度はようこそお越しくださいました。お部屋の方にご案内させていただきます」
その中の1人のおっさんが、やたら渋い声で話しかけてくる。
最初のコメントを投稿しよう!