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「この度は最高の式に招待してくれてありがとう。あなた方の素晴らしい首相にお礼を申し上げる。あなた方にも幸運があることを」
同じくらい渋い彼の声が、おっさんに祝辞を述べた。いい声すぎてちょっとぞくっとするけど、それは内密に。おっさんは軽く微笑み、そのまま俺たちを建物の奥に誘った。
ずっと彼の腕にしがみついて歩く。中は壁も大理石で作られていてとてもひんやりとしていた。その空気の冷たさが、少し気持ちを落ち着けてくれた。廊下は大きな窓も何箇所が作られていて、大きな庭園が一望できる。
「すげぇ庭……」
絵に描いたような外国の豪邸の庭だった。
広い芝生に、なんだか刈り込みされている低木、クリスマスツリーみたいな円錐状の高い木、薔薇をあしらった洋風の東屋。日差しを受けて輝いて、見ているだけで心地いい。すごく女子ウケしそうだ。
「一流の庭師が専属で担当しているそうだ。結婚式に向けて、より一層磨きがかかっているらしい」
彼は渋い声のまま言うけど、もともとの姿を知らないからなんとも言えない。
「あとで散歩したいな、せっかくだし。こんな綺麗な庭だから、出来るかわかんないけど」
ぽつっとそれだけを呟くと、後で聞いてみよう、といつもの優しい声で耳打ちされた。
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