雨傘のない雨の日

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「最悪だ……」 どうしようもない気分で、空を睨んでみる。 曇天。雨粒。一面灰色。これぞ、まさしく梅雨の空。 恨めしげに睨んだところで、やっぱり雨はやまない。 天気予報は雨。降水確率百パーセント。朝から雨が降っていた。 だから、僕は傘を持って出掛けた。それが今朝のこと。電車に乗って、高校に行って、授業を受けて、また、電車に乗って、それで、今。 僕は一人、空を睨んでいる。 「最悪だ……」 誰にもきかれないように、心の中で呟く。 要するに。 僕はちゃんと傘を持って出掛けた。 だが、しかし、傘を電車に忘れた。 さっき降りた電車に。 はしっこの席に、ラッキーって思って座ったのが運のつき。横の手すりに傘を引っかけて、それをそのままにして、僕は電車を降りてしまったのだ。 「あ、傘」と思ったときには、時すでに遅し。 プシューという間抜けな音をたてて、僕の後ろで扉は閉まっていた。 「ああ、今日、ほんとに最悪」 空を睨む。 空は気兼ねなんてしてくれなかった。
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