雨傘のない雨の日

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僕が何か言う前に、お姉さんが口を開いていた。 「あんたは高校生?」 「はい。あの、何のお仕事されてるんですか?」 「当ててみてよ」 訪ね返せば、クイズになる。 でも、正直なところ、僕には全く検討がつかない。 駅ビル直結と言っていたから、オフィスかお店か、室内での勤務だろうとは思うのだが、この人がスーツを着ているところは見たことがないし、現に今もラフな格好だ。肩には小さめのカバン。ぬれても大丈夫なのだろうか。ちょっと気になる。 制服に着替えて仕事、と考えると筋は通るけど、でも、会社勤めなんて似合わない気がするし、店先に立っている姿も想像できない。もっと自由で、型にはまっていなくて。 だって、一緒にぬれて帰ろうなんて、言う人だし。 そんな印象が邪魔をして、全く予想がつかない。 「まあ、着くまでに当ててよ」 結構なスピードで歩いているのに、お姉さんの声は余裕があって、のんびりしている。
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