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さてと、ボチボチ始めるとしますかーーー
ユリは2000年初期まで電波塔として使われていたタワーに忍び込むと、警備の目を盗んで非常口からタワーの外へと出た。
「ふぅ…なかなかの光景ね。」
そこから見下ろすとまるでジオラマの様な景色が広がっている。
こんなちっぽけな街の中であんな下らないないことが繰り返されているのかと思うとユリは一刻も早く何とかしなくてはと決意を新たにした。
ユリは持ってきた自前のノートパソコンを開くと早速、ある機関へのハッキングを試みた。
そう……ユリの職業はハッカー。
と言っても、各先進国より選抜されたメンバーで結成されている国際組織に所属しており、合法的にハッキングをすることで早期に危険情報を得て国際テロやその他の大規模な組織ぐるみでの犯罪を未然に防ぐと言う役割を担っている。
その守備範囲は年々広がるばかりで五年前にユリが火星に転勤になったのも、とある火星住民のテロ情報を把握するために送り込まれていたのだ。
なのでユリが今からやろうとしていることは、さほど難しい仕事ではなかった。ユリにとって官邸のメインコンピューターに入るのはインスタントコーヒーをいれるくらい簡単な事だった。
「OK、これでまずはこれでよしっと。」
ユリは必要な情報だけを抜き取るとまた別のノートパソコンを開いた。
そしてキーボードを猛スピードで叩きアクセスするとーーー
「ビンゴ。」
画面にはある人物にこっそりつけたマイクロカメラによって映し出されている風景が鮮明に浮かび上がった。
実はここへ来る前にユリは官邸内に潜入していた。
選び抜かれたハッカーとして国際組織に属する今のユリの立場を使えばそれくらいは容易いことだった。
そしてある大臣の第一秘書に上手く接近し、その時にマイクロカメラをスーツの襟に張り付けてきたのだ。
「良かった。やっぱりMade in Japan。感度最高ね。にしても、ったく、あのインテリエロ秘書め、意外にしつこくて参ったわ。上手くかわせたからよかったものの……」
一人愚痴りながらも、目にも止まらぬスピードで次から次へと情報を落とし込み処理していく。
「予定では間もなくとある場所へ御一行さんが到着なんだけど……ん?もしかして……ビンゴッ!」
ユリは左側の口角だけを上げニヤリと笑った。仕事が上手くいったときに出るユリの昔からの癖だった。そして、僅かなスペースしかないその場に寝転がるとユリは目を閉じその時が来るまで眠ることにした。
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