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月に代わって…
保とユリが数年ぶりの再会を果たしたあの日からーーー
つまり転勤先だった火星からユリが戻って半月が過ぎていた。
保から自分がいない間にすっかり変わってしまった今のこの国について、ある程度の話は聞いたものの実際に街でほんの少し呟いた言葉に対しても容赦なく罰する監視ロボットを見ていてユリはただ、ただ、憤りを感じていた。
ーーーこんな世の中、許されていいわけがない
保にあれほどまで注意を受けていたもののいつしかユリの心の中にはそういった思いが芽生えていた。
そしてついに、ユリは決心した。
一瞬、保の顔が浮かび胸がチクリと痛む。
けれど、決めたんだ。
前に進むと決めたのだからと気持ちを奮い立たせる。
「誰かがやらなくっちゃ。だってこんな世の中、おかしすぎるじゃない!」
誰よりも正義感の強いユリには街のあちらこちらでAIが監視する今の世の中は耐え難く限界だった。
誰もが心豊かに暮らせる世の中にもどさねば。
ユリは今一度強く決意を新たにした。
それと同時にもう一つ芽生える思いーーー
それは、ユリが遥か昔から密かに抱いていたもの。
そう、ユリにはある夢があった。
ユリの人生を語るにそれを外すことはできない。
それほどまでにユリに影響を与えたもの。
その夢とはーーー
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