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「神性の有無は、詩乃サンが信じる神――天の主とは違うものだけど、詩乃サンの実家の本尊は『神』だろうね。オレを狙う使徒の『神』も、本人は実際八百万の云々の方だしね」
「やっぱりそうよね……わたしは結局、主より遣わされた聖霊も、実家の『神』も最早宿せない人間だと思う」
「神」の使徒と「神の使徒」は、厳密には違う。どちらも主たる神の被造物だが、主直属の御使いが真の「神の使徒」で、聖なる紅い瞳の天使がそうだろう。
詩乃が会ったのは使徒である「神」、八百万の世の闇であり、信仰に依らず神性の縛りで主に造られし「力」だ。だから詩乃は「神」を主とは言わない。詩乃のような「力」ある信仰者は、主と「神」の間の存在と言える。
「使徒たる『神』は、己の神性に絶対服従。神性を持つ奴らを狩る側で、誰もが敵だから自分も常に危ないからね。その意味では詩乃サンに喧嘩売った奴、大したもんだと思うよ。ホントに迷ってたのはどっちだって話」
「そうなのかしら……仕えるなら疑問を持ってはいけないと言われたのに」
「そんなの、自分が迷ってるからじゃん。だから中途半端そうな詩乃サンに、信仰とは何たるかをききたかったんじゃない?」
それならあの時、詩乃が鴉夜に答えたことはあれで良かったのだろうか。
詩乃はいくら考えても、「主が命じれば大事なものを差し出せるか」に答が出せなかった。それは例えば鴉夜の場合、「運命であれば大切な人との別離を受け入れられるか」、その切なる問いであったことを知る由はない。
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