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 使いの神様は悪魔の不興には目もくれずに、退治すべき悪魔におかしな提案を始めました。 「何か面白い話をしてよ。アンタがオレに付き合ってくれる内は、見逃してやるからさ」 「それはどこの千夜一夜物語ですか。しかも面白い話って、何で恋バナなんですか」 「あはははは。アンタ本当に、人間界のことには無駄に詳しいな」  教会という籠の中の悪魔が、神様の使いにかなうはずもありません。  神様も悪魔もそれを知っています。この真っ暗な礼拝堂は、悪魔の墓場になるはずなのです。  そもそも悪魔は恋をしたことがありません。だから悪戯好きの神様が望むような話はできそうにありません。 「ヒトが欲しいならヒトに堕ちるか、ヒトを『神』にするしかないんじゃないですか。オマエも含めて、どうせみんな、(まが)いものの『神』様ですから」  悪魔はホンモノの悪魔なので、ホンモノの神が何かわかっています。  けれどここにいる「神」様は、ホンモノの神の欠片に過ぎません。それも性質の悪いがん細胞のように、悪魔の本当の相方を食べてしまいました。  神はもっと、全知全能の存在なのです。この世界の全てを知りつくし、また全てでもあるのです。  そんな全知全能の神様なので、その使いにはこんな悪い「神」様も含まれてしまうのです。 「そんな答が聞きたいんじゃない。オレはアンタの命乞いが聴きたい――アンタと何か喋りたいんだ」
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