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 無理難題と知りながら悪魔に会話を迫る神様は、ただの淋しがり屋でした。  悪戯好きな悪い神様には友達がいません。それもわかってしまった悪魔は、神様を無下に突き放すことができなくなりました。 「神が人間と恋をする話は、古今東西どの神話でもあります。別に何の条件も必要ないし、難しく考えることはないです」 「でもそれ、どれも行きずりか、ヒトが強引に神のものになる話ばかりだろ? ヒトと神が、自然に一緒になることはできないのかな」 「違う世界の生き物ですから。二次元が三次元を侵すくらい難しいです」 「やっぱりそうなのか。創り手は生み出したものに恋をできても、生み出されたものは創り手を見ることすらできない。創り手が自ら、生み出した世界に堕ちなければってことかな」 「そういう話もちょくちょくあります。二次元に三次元の視点が入る話もあります。でも結局は、神による神のための神が行う一方通行です」 「そうなのか、つまらないな。じゃあ神は、孤独でないヒトとヒトを創ることはできても、神自体は永遠に孤独なのか」 「同じ『神』と出会わない限りは。オマエは誰も、他の『神』を探す気はないんですか」  ずっと面倒くさそうに、悪魔は淡々と話を続けます。  悪魔を生かすも殺すも神様の自由です。何の抵抗も無駄でしかないので、淋しい神様を少しでも愉しませてあげようと思っただけです。
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