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 自ら神の籠に収まった青銀の鳥は、真っ黒なヒト喰いカラスに比べて、ため息が出るほど綺麗だった。  悪魔というのは美しい姿をした者が多い。ヒトを魅せて(たぶら)かすためなら、至極当然のことなのだろう。  「悪神」の翼を持つ彼のように、ヒトの闇をわざわざ掘り返すのとはわけが違う。悪魔がヒトに夢を見せるものなら、神はヒトの現実をさらけ出すのだ。  彼は率直に、この場に降りた理由を語る。 「オレはアンタと、何か喋りたいんだ」  この悪魔は教会という聖域にこもることで、ヒトとの関わりを絶とうとしている。それは勿体ないと、悪魔をそこに追い込んだ彼は思った。  彼という「神」の使徒に狙われていたから、悪魔は自分で死地にやってきた。悪魔の周りにいた者達を、その破滅に巻き込まないために。  悪魔は彼を拒絶するように、普段は使わない丁寧語を口にする。 「オマエは誰も、他の『神』を探す気はないんですか」  あまりに潔い悪魔に、彼は興味を持った。ヒトを(そそのか)す「悪神」として動く彼――まずヒトしか視野に入らない使徒にとっては、悪魔の問いは愚問でしかない。  そんな彼を憐れむ目つきは、悪魔たる存在にはふさわしくない。だから通り雨として世界をさまよう彼が狩らないといけない。
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