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ヒトの心に付け込む悪魔。特にこの青銀の鳥は、ヒトに都合良く、ヒトの願いを叶えるために造られている。
「少なくともアンタは、ヒトの孤独を埋めるための生き物だろ」
「……」
「アンタは人間の望みで造られた悪魔。それなら人間は、神の望みで創られた生き物だとは思わないの?」
ある人間の女性、大事な我が子を失った母が、悪魔の力に縋って我が子と生き写しの悪魔を造った。女性の夫は天上の鳥、言わば天にある国の番人で、聖なる番人の役目も子の代わりである悪魔に引き継がされた。時間という大いなる闇を渡り、どの時空にも雨を降らせる使徒である彼は、悪魔が生まれた事情を調べて知っている。
悪魔は自身の素性を、知られる相手が少ないらしい。いつもは鋭く細められた目が、一瞬ぴくりと開かれたことを、彼は見逃していない。わざわざこの教会に籠った悪魔に、駄目押しとばかりにたたみかける。
「悪魔のアンタは、何を望むの? 有り得るところは、さしずめ天使……誰より近くて、遠い同胞かな」
「…………」
「ここは唯一、アンタが望む天使の力が残る聖域。アンタだって、孤独は怖い――そういうことじゃないのか?」
何人も彼に、隠し事はできない。正確に言うなら、その者が知らない真実までも、彼は観に行くことができる。
今このタイミングで、どうして悪魔がこの場所に縋ったのか。
死期を悟った者が何処に向かうか、彼は嫌というほど何度も見てきた。ヒトの本能はほとんど同じで、悪魔も人間も神が造りしものと、これほど思い知る時もないくらいだ。
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