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夜明けの晩とは、いったい、いつのことであるのでしょうか。
よくわからなくても、そうとしかいえない時間に、子供はいつも通りの怖い夢を見ます。
――オレと一緒に、この世界の外に行こう。
真っ黒なカラスが、子供の眠る教会の屋根に座っています。
アルファベットのC型、逆さま三日月を背にして、カラスは大きな黒い翼を広げています。
大事そうに真っ赤な両手で包み込む、不思議な蒼い六芒星。それを昏い空に高く掲げて、まるで悪魔みたいな顔で笑っているカラスです。
「あははははは……! キレイだろ、軽いだろ、あはははははは……!」
子供は毎日、怖い夢を見ます。こんなおかしな夢ばかりで、言っても誰もわかってくれません。
特に最近、子供がよく預けられるこの教会に、妖しい悪魔が棲みついてしまいました。それから子供は悪い夢を見てばかりです。
引っくり返った亀のように、じたばたしながら目が覚めた子供は、今日こそ悪魔を追い出すと決意しました。
一緒に寝ている大好きなおねえさんを、起こさないようそっと布団を抜け出すと、いつも床で寝ている悪魔の姿が何故かありません。
「……?」
不思議な胸騒ぎがして、子供は足音をたてないように、教会の礼拝堂へと向かいます。
十字架の近くの、おかしなカラスに気付かれないよう、真っ暗な屋内を通って礼拝堂の扉を開けます。
そこですぐに、子供の目に飛び込んできたものは――
「……やっぱり、こうなった、か」
まるで鍵穴のように、白い服の胸からお腹を真っ黒にして、祭壇の前に座り込んだ黒い髪の悪魔。
礼拝堂に入ってきた子供に気付くと、悪魔はとても苦しそうに、子供の方を見て笑いました。
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