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 彼がどうしてわざわざ、この天国に戻ってきたのか。  悪魔はその意味を改めて考えたらしく、神妙な顔付きで大きく首を傾げた。 「そういう意味では、オレは多分、お前を使うことはできるけど……お前はそれを、望んでしまうの?」  何がしかで、彼がとにかく悪魔を心配して来たことは伝わっているらしい。何で急に、と不思議そうにはしているが、彼にとってそれはキッカケに過ぎなかった。  前から薄々、思ってはいたのだ。この悪魔は甘く、無責任にヒトを助ける死神であるわりに、悪魔を助けようとする者は少ない。  彼の妹は悪魔が関わった一団に最後は囚われていたが、この悪魔がいなければもっと酷い扱いを受けていたかもしれない。悪魔も嫌々関わっていたところを、ぶち壊したのが彼というわけだった。  だから彼は、この世界ではおそらく初めて……孤高な悪魔とその血の契約を、自ら申し出る。 「……アンタさえ良ければ、だけど。俺がアンタの『鍵』になって、アンタの守りたいものを、良ければ一緒に守るけど」  「!?」と端整な目を丸くする悪魔の顔は、とても珍しい驚愕ぶりだった。  ここでの悪魔には、「鍵」などいない。悪魔の持て余す「力」を預かり、悪魔を縛る天国から解放できる相手は、この時空においてはまだいないのだ。他の多様な世界線ならいざ知らず。  何故そうした、「鍵」という可能性の存在自体を、彼が知っているのだろうか。悪魔も驚いただろうし、そして彼自身も、誰がそれを教えてくれたのかはわからなかった。
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