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 お前ねぇ……と。彼のあまりの唐突ぶりに、いつにない怪訝さで両腕を組み、悪魔は大きな溜め息をついた。 「誰に聞いたのかは、知らないけどね……『鍵』っていうのは、大事な『力』を預けるくらいだから、大事な相手しかなれないものでさ。いてくれたら確かにオレはかなり楽になるけど、そう簡単に見つかるものじゃないことは、わかる?」  悪魔が警戒するのは、当然の話だった。「天国」の番人をするほどの「力」を持つ使徒は、その「力」を過去に何度も狙われている。  彼の妹が、攫われた先で悪魔使いとなったために、妹にも悪魔は利用された経緯がある。悪意のなかった妹からすら、そうして被害を受けるのだから、この翼の悪魔はほとんど誰にも、本当に心を開いたことがないのだ。  彼にとって、そんな悪魔の反応は、全くの想定内のものだった。なので、それくらいで話を終わらせる気は毛頭なかった。  そうでなくて、誰がこんな天上までやって来るだろうか。最早当初の目的など忘れ去って、彼は意固地に、悪魔を口説き落とすことを決めていた。 「アンタの翼を奪った責任で、俺はアンタに生かされたんだから。俺を生かし続けるなら、アンタもその責任を取れよ」 「……――」  何の権利で、彼に生きろと言うのか。  翼なんていらない、返すと逐一ごねた紫雨に、悪魔は曖昧に笑ってはぐらかすばかりだった。 「鶫も猫羽もいつか死ぬのに、俺だけ生き続けるなんて嫌だ。その時ちゃんと、アンタは俺を殺してくれるのか?」
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