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災厄はいつも突然降りかかる。
人は誰しも、自分にだけは災厄は降り注がないと信じてしまうのかもしれない。
茹るような酷暑で疲れ切った人々に、天災は容赦なく襲い掛かった。
2068年8月8日午後3時、のちに東京大震災と称される大地震が発生した。
マグニチュード8.7を記録した首都直下型地震は、東京で働いていた多くの労働者の犠牲を出し、日本中に甚大な被害を与えた。
特に経済への打撃は計り知れなかった。首都機能の中枢は移転したとはいえ、公的機関に大企業、中小企業まで膨大な数の会社が残っていた首都の壊滅と大量の労働者の喪失により、日本は国家機能の一時停止まで追い込まれた。
震災から一週間後、政府は首都を完全に北海道へ遷都することを宣言し、東京は首都の称号を失った。
少子高齢化により、働き盛りの労働者の8割が首都圏にいると言われていた当時、『東京』に残されたのは震災遺族となった子どもと高齢者ばかりであった。
澄良が生まれたのはそれから20年後。
人口は4000万人を割るほどに減り、未だ苦しい状況の続く時代であった。
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