水たまりアルパカ、上洛す

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水たまりアルパカ、上洛す

アルパカをご存知だろうか。 僕はよく知らなかったからスマホで調べたのだ。南アメリカの山岳地帯で放牧されている家畜で、ビクーニャより少しばかり大きく、グアナコよりほんの少し小さい、らしい。ふうん。 僕はビクーニャもグアナコも知らないけれど、目の前にいるアルパカは恐らくウィキペディアに書かれているアルパカとは、ちょっと違うアルパカなんだろう。 ここは、アンデスでもアルパカ牧場でもなく、雨の京都の、哲学の道なのだ。しかも深夜。 大学のレポート提出が明日に迫った深夜、僕はどうしてもアンパンが食べたくなり、雨降りしきる中にしぶしぶ出てきたところなのだった。 しとしとと雨降る琵琶湖疏水沿いの哲学の道、もうすぐ法然院といった道中の水たまりにいるそれは、すごく小さい。シーズーくらいの大きさだ。 僕はそのアルパカを興味の赴くまま、傘を持つ手と反対の手で抱きかかえてみた。雨に濡れそぼった毛がちょっと気持ち悪い。 「お、下ろしてはいただけませんか」 む、こいつ、喋るんか。びっくりして手を離してしまったが、アルパカは意外にも身軽にその四つの足でシッカリと着地した。     
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